活動レポート

豆 『Tさんの宝物、わたしの宝物』・板橋ナーシングホーム

  

 月に2回板橋ナーシングホームに傾聴訪問しています。
リラックスした雰囲気の中で、入所されている皆さまのお話を、耳と目と心で聴かせていただくことを心がけています。
そんな活動の一場面をご紹介します。

 1月、久しぶりにTさんのお部屋をお訪ねすると、いつものスタイルでベッドに腰掛け本を読んでいらっしゃいました。
その後、私たちは食堂へと場所を移し、Tさんの近況について暫く耳を傾けておりました。
そのうち何故か不意に席を立たれ、歩行器を巧みに操って、ご自分の部屋に戻られてしまったのです。
大病の後、思いを上手く伝えられなくなっているTさん。
短い言葉を選びながらゆっくりと話してくださるのだが、はっきりと聴き取れないことも多い。
もしかしたら失礼なことをしてしまったのではないかと不安な気持ちでソッと部屋を覗くと、真新しい黒表紙の大判日記帳の裏ポケットから一枚の年賀状を出そうとしておられました。

 それは姪御さんご家族の写真入りで「おじいちゃんお元気ですか」に始まり、なかなか会いに行けないというお詫びに加え、無事にお過ごし下さいなどの気遣い溢れる文面が記されていました。Tさんはこの賀状を見せてくださるために部屋に戻られたのでした。
姪御さんが元日のプレゼントに宅急便で届けた物で、賀状とともに2011年版の日記帳と、毎年Tさん御用達の「高島開運暦」が添えられていました。言葉の不自由さを跳ね返す程のニコニコ顔で、何度も写真の姪御さんを指さして大事な宝物を教えて下さったのでした。

 会話がままならない状況で過ごす日々は、お辛いことが多いのではと単純に考えてしまう。しかしながら買い物ボランティアのサポートを受けて、近くの商店街へ出かけた日、外出が叶わなかった方々に草餅のお土産を買っていらした。いつでも周囲に配慮を忘れないのだ。そんなTさんに活動を通してお会いするたびに、お心の豊かさと優しさを見せていただく。私は、気がつくと温かい気持ちいっぱいで帰路に就く。ひだまりの時間を与えてくださったのだ。

 次回は「東村山ナーシングホーム<」の活動をご紹介する予定です。